「東京の都市づくり通史」を読んで東京都市圏の都市計画を考える

都市政策

「東京の都市づくりのあゆみ」「東京の都市づくり通史」について

東京の都市計画については、都市計画法・建築基準法制定100周年にあたる2019年6月に「東京の都市づくりのあゆみ」(東京都都市整備局)、「東京の都市づくり通史」(東京都都市づくり通史編さん委員会/東京都都市づくり公社)が公表・出版されています。今回は「東京の都市づくり通史」をご紹介します。

東京都都市づくり公社

 「東京の都市づくり通史」を発行した「東京都都市づくり公社」をご存知ない方もいらっしゃるかもしれません。大原正行 理事長(公益財団法人 東京都都市づくり公社 )の「「東京の都市づくり通史」発刊の報告とお礼」によれば、

 東京都都市づくり公社の前身である東京都新都市建設公社は、昭和36年7月、東京の急激な膨張とこれに伴う多摩地域の無秩序な都市開発に対処するため、東京都および多摩地域の市街地開発地域に指定された6市町により設立されました。
 設立以来今日に至るまで、市町村から受託した土地区画整理事業、下水道事業などを実施し多摩地域の発展に寄与するとともに、東京都の木造密集地域不燃化10年プロジェクトにも参画し、東京の秩序ある発展に貢献してまいりました。
 平成25年には、公益財団法人に認定され、名称を東京都都市づくり公社と改め、これまで蓄積してきた専門技術や知識、ノウハウを活用して、都民が行うまちづくり活動を支援する事業などにも積極的に取り組んでおります


 とのことです。我々都市計画に携わってきた関係者には、多摩ニュータウンを推進してきた「東京都新都市建設公社」のイメージが強いです。
 高度成長期の開発関連、特に住宅・都市整備公団(現UR都市機構)の関係では、「〇〇新都市●●●」というネーミングが多かったように思います。

東京都都市づくり通史編さん委員会

 「東京の都市づくり通史」の編さんは「東京都都市づくり通史編さん委員会」が行いました。
 委員長の岸井隆幸先生(日本大学理工学部土木工学科 特任教授)は第32代日本都市計画学会会長(2011~12)であり、渋谷駅周辺まちづくり、エキサイトよこはま21、など大規模な都市開発計画においても中心的役割を果たしていらっしゃいます

「東京の都市づくり通史」特設サイト・冊子版

 WEB上の特設サイトには、通史の説明に加えて「通史一覧」と「年表」がアップされています。
http://tokyo-urbandesignhistory.jp/
 冊子版を読む前にご覧になってはいかがでしょうか。

 「東京の都市づくり通史」の冊子版は第1巻、第2巻に分かれており、それぞれ271頁、483頁と読み応えのある書籍でした。

 第1巻は以下のような構成となっており、時間軸から都市づくりをまとめる構成になっています。
 第1編 総論 ~時代の変化と都市づくりのあゆみ
 第2編 年表 ~年表から追う都市づくり
 資料編 

 また、第2巻は都市づくりの各分野ごとに編さんされています。
 具体的には、第1章「都市政策」、第2章「土地利用」、第3章「市街地整備」、第4章「都市施設(道路/鉄道/港湾空港/河川/上下水道/公園緑地」という構成です。
 
 東京都の都市づくりを対象にしていますが、国・首都圏の動きや都市づくり政策をトレースしており、東京都の計画図や資料だけでなく、首都圏(東京都市圏)を対象としたマスタープラン、計画図など豊富な資料を網羅しています。

 このため、私のような東京圏政令指定都市の都市計画関係者、特にマスタープランや広域的な都市計画(鉄道計画、高速道路計画など)を専門にしている関係者には、とても貴重な資料といえます。
 また、都市計画を学んでいる学生の方々にも強くおすすめしたい書籍です。都内自治体か県・政令市の図書館を利用して是非一読してください。


 「これまでの東京の都市づくりの歴史を振り返りますと、それぞれの時代における社会・経済情勢の中で、関係者の並々ならぬ努力により進められてきたことが認められます。」とは、友人でもある 佐藤伸朗 東京都技監(当時)の挨拶の一文ですが、都市づくりに取り組んだ数えきれない先人の努力には頭が下がる思いがします。
 さらに、何よりも「都市づくりの歴史を編さんし後世に残していく」ことの重要性を理解し実践している、東京都、都市づくり公社、編さん委員会の皆様に敬意を表します。

【参考】「第1編 総論 ~時代の変化と都市づくりのあゆみ」目次

前史 1868〜1918年 (慶応4〜大正7年)
 帝都の顔づくりと市区改正設計

 明治政府の威信をかけた西欧的な都市づくりが芽生える。銀座の不燃化、鉄道の導入と東京駅の設置、鉄道・路面電車の整備、上下水道の整備などが行われた。
Ⅰ期 1919〜1945年 (大正8〜昭和20年)
 「都市計画」制度の確立と震災復興そして戦時下の時代

 都市計画法(旧法)が制定。関東大震災からの復興を経て現代の東京の基礎となる計画・事業が展開される。しかし、期の後半は徐々に戦時色の濃い時代となる。
Ⅱ期 1945〜1955年 (昭和20〜30年)
 戦後の復興都市づくりの時代

 戦災により再び灰塵と化した東京を都市づくりの千載一遇のチャンスと捉え、首都圏を視野においた東京の復興が目標とされた。
Ⅲ期 1956〜1965年 (昭和31〜40年)
 高度経済成長と大東京を見据えた都市づくりの時代

 オリンピック開催をはずみに、国の法制(首都圏整備法など)と機を合わせ、将来を見据えたインフラ計画の策定、見直し、都市改造事業が推進される。
Ⅳ期 1966〜1980年 (昭和41〜55年)
 巨大都市東京の深刻化する都市問題への対応の時代

 戦後の高度経済成長の歪みが顕在化し、過密、公害・環境、防災等に対応した都市づくりの時代。オリンピックの反動もあり財政状況は深刻化し、基盤整備が遅滞した。
Ⅴ期 1981〜1999年 (昭和56〜平成11年)
 一極集中から多心型構造への再編の時代

 多核多心型の都市構造の考え方のもと、副都心、多摩の心に受け皿をつくる都市づくりが展開される。
Ⅵ期 2000年〜 (平成12年〜)
 環状メガロポリス構造と国際競争力強化の時代 

 アジア都市の台頭もあり、国際的な都市間競争が激化。首都移転論に対抗する環状メガロポリス構造のもと、民間活力の活用による都市再生が積極的に行われる。

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